介護老人保健施設ってどんな職場?仕事内容や収入も紹介 作成日:2020.03.16
最終更新日:2020.03.25
介護職として働いていても、介護施設の種類が多いと感じるひとは多いです。
ここでは、介護職が働く上で選択肢になる「介護老人保健施設」の詳細を紹介しています。
実際に働いている人から見たポジティブな意見・ネガティブな意見も集めたので、ぜひ参考にしてください。
介護老人保健施設とは
介護老人保健施設は、病院と在宅の中間施設として位置づけられています。
病院退院から自宅復帰するまでの、医療・介護・リハビリを提供する施設です。
- 既に症状は安定していても自宅に帰るには、心もとない。
- もう少しリハビリテーションが必要だ。
上記のような人たちに、専門的なリハビリテーションプログラムを提供します。
リハビリの取り組み方は施設によって大違い!
介護老人保健施設の最大の特徴はリハビリですが、施設ごとに大きく取り組み方が違います。
集中的にリハビリをする施設の場合、週に3回、3ヶ月以上リハビリをします。比較して、レクや入浴などに時間をかけ、リハビリが1~2回の施設も存在します。
自分がどちらで働きたいかをよく考えて、しっかりと調べて働き始めることが大切です。
従来型とユニット型介護老人保健施設がある
少し前まで、多床室がメインである「従来型」の介護老人保健施設が主流でした。近年においては10部屋くらいをユニットとして扱う「ユニット型」が増えています。
ユニット型が増えた理由としては、個人を尊重するスタイルが人気のため。一人ひとりのスペースが広くなるので、職員としては入居者に事故がないよう見守り業務が重要視されます。
介護老人保健施設の仕事内容・流れは?
介護老人保健施設には、特養よりも軽度の方が多いです。
また、在宅復帰を前提としていて、前向きな利用者が多い傾向にあります。「自分のことは自分でやる」といった利用者の方が比較的多いです。
また、基本的に看取り介護ではありません。
そのため、介護職の体力的・精神的な負担は他の施設よりも比較的に少ないです。
リハビリで回復していく利用者を見る喜びはひとしおです。
介護職の仕事内容は?
食事や入浴・排泄・着替えの補助など、基本的な介護の仕事は網羅して行うことになります。
また、レクリエーションの実施・緊急時の対応も必要になり、比較的忙しいです。
また、一人ひとりの状況に合わせ、医師・看護師・作業療法士・理学療法士などの職種が連携して働くことになるので、チームワークを意識した働きが重要視されます。
介護老人保健施設での仕事の流れ
全体の流れの例を紹介します。
- 08:30…夜勤スタッフからの引き継ぎを受ける
利用者さんが朝食を終えるくらいの時間なので、夜勤者に交じって排泄介助を行う
- 09:00…入浴介助。
人手不足でこの時間から入浴してもらわないと間に合わない。利用者さんにできる限り自力で行ってもらう。ただ、間に合わないので着替え、体を洗うのを手伝うことがほとんど。
- 11:30…昼食準備・食事介助
フロアで配膳。老健には比較的元気な人が多いので、自分で食事してもらえる。
- 12:00…口腔ケア・排泄介助
昼食後はなにかと忙しく、食事をする暇がないこともある。忙しいときは30分だけ休憩をもらう。その後排泄介助など行い、食休みで横になってもらう。
- 12:30…まとめて休憩をとれないので、ここで休憩をとる。
- 13:30…おやつの準備
- 14:30…レクリエーションの実施。また、ラジオ体操やリハビリなどを行う。
利用者さんによってリハビリ職の指示にしたがいリハビリのサポートを行う
- 15:00…おやつの実施。配膳と多少の食事介助と、排泄介助を行う。
- 16:30…医師の回診・指示を受け。見守り・介助など。記録作成・夜勤スタッフへの引き継ぎ
記録作成は細かい空き時間で行い、特にまとめてやらないようにしている。
- 17:00…夕食準備
- 17:30…退勤。基本的に残業はない
実際に働いている人の体験談
ポジティブな声
介護老人保健施設で働く人の声①
以前は特養で働いていて、利用者の看取りがつらすぎて、働くことを断念するレベルでした。そもそも祖母のことが大好きでこの仕事を始めたので、やりがい自体はあったのですが、どうしても、何人も看取らなければならない状況に耐えられず…。
老健の場合は、利用者さんが日々元気を取り戻していく姿を間近に感じることができ、一人ひとりの卒業を楽しみにできます。
昨日まで少し歩くだけで痛がっていた利用者さんが、少しずつ歩けるようになり、表情も明るくなって返っていく姿をみて、毎回誇らしい気持ちになります。
介護老人保健施設で働く人の声②
医療系のケアの現場に立ち会いたくて、老健で働きはじめました。
介護職の人だけでなく、看護やリハの人と一緒に働くのは非常に刺激的で、とても勉強になる日々です。一つの体調不良を取っても、介護職の人は睡眠や食事を見るのに対し、看護の人はバイタルチェックを入念にします。
向こうの情報をしっかりと得ていれば、こちらとしても必要な情報を渡すことができたりなど、連携が上手くいっている瞬間がたまりません。
ネガティブな声
介護老人保健施設で働く人の声③
特養から転職して老健で働きはじめました。はじめは精神的に楽でいいかな、と思っていたのですが、利用者の入れ替わりが激しいことに戸惑っています。
特養のことは看取りまで行っていたので、じっくり時間をかけて利用者さんと向き合っていました、しかし、老健の場合、コミュニケーションのいとぐちを見つけた!と思う頃には退所なさることもしばしばあります。
利用者さんが元気になって退所なさるのはもちろん喜ばしいことですが、寂しい気持ちも湧いてきてきてしまいます。
介護老人保健施設で働く人の声④
医療と介護の連携ができていると聞いて、介護老人保健施設に転職しました。介護職として自分ができることを探せれば、と希望をいだいて転職したのですが、少しイメージと違いました。
医療スタッフの意見が重く、介護スタッフの意見は基本通りません。聞いてもらえないこともあります。介護職は従うばかりです。
リハビリ職も看護職も、その人自身よりも体調や病状を見ているような気がしています。実際は一人ひとり思い入れを持って働いてるのかもしれないけど…。介護職には上から目線なところもなんだかしっくりきません。
医療と介護の連携とは口だけだな、という感じです。
働く人の職種は?
老健では介護職以外にも多くの職種の人が働いています。
大きく分けて以下です。
- 医療系
- 福祉系
- その他の職種
それぞれについて細かく説明していきます。
老健で働く医療系の職種
医師
老健の医師は、診断や治療、看護師・リハ専門職への指示をおこないます。老健の医師の場合は病院のように職種ピラミッドの頂点というよりかは、マネージャーやコーディネーターに近い存在です。
看護師※看護師・准看護師
老健の看護師は、医師と協力して利用者のバイタル管理を行います。また、看護職と連携し、医学的観点から適切なケアを模索していきます。病院ほど医師の数が多くないので、ケアチームのリーダー的存在として活躍します。
リハビリ系専門職※PT/OT/ST
老健のリハビリ専門職は、利用者の状況把握から、リハビリの計画・実施・指導などを行います。理学療法士(PT)作業療法士(OT)言語聴覚士(ST)それぞれの職種の専門性を活かして働いていきます。老健には通常2名以上のリハ系専門職がいて、リハビリ施設としての中心亭存在になっています。
薬剤師・歯科衛生士
医療・リハビリ系施設である老健の中には、服薬管理や口腔管理のために、歯科衛生士がいる場合もあります。
老健で働く福祉系の職種
介護職
老健の介護職は、日常ケアと専門職との連携の上での専門ケアを行います。老健の利用者は、日常生活がしづらく入居した方々です。そのため、日々の生活を支える介護職の存在は必須となります。老健の中で最も数が多いです。
国家資格である介護福祉士と、その他、初任者研修や実務者研修など、ヘルパー資格保持者がいます。
支援相談員
支援相談員は、老健独自の職種です。相談窓口的な昨日を担っています。
利用者さんがその人らしく、その地域で暮らしてくための地域サポートなどを行います。また、家族と施設・家族と利用者の付き合いかた、関係の相談にものり、生活をコーディネートしていきます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
老健のケアマネは、利用者の希望を踏まえて、介護サービスの利用法などをプランニングします。ケアマネは介護保険制度と同時に誕生した専門職です。既に他の医療・福祉系の資格を持っている人だけが試験を受け、合格することができます。
社会福祉士
老健の社会福祉士は、医療・福祉・介護などの様々な社会保障サービスを提供します。利用者の人権を考えながらの提供です。老健の場合、社会福祉士の資格を持っていても、支援相談員やケアマネとして活躍している例が多いです。
老健で働くその他の職種
管理栄養士・栄養士
医療・福祉系の資格とも言えますが、管理栄養士・栄養士も老健で働いています。利用者の栄養状態の維持や、適切な飲み込みの為に、食事に関するすべてのことをプランニングします。健康状態の把握と、向上・維持のためのプランづくりなど、多職種と協働して行っていきます。
事務職
老健の事務職は施設の窓口・運営基礎となる事務部門となります。
老健の場合は事務職もケアチームの一員として機能することもしばしば。施設全体の行事の際などは介護職などと共に活躍します。
厨房職員
老健の厨房職員は、利用者に提供する食事を作ります。街にあるレストランと違うのは、健康状態や食べる機能を考慮した料理を作ること。調理の方法によって利用者が飲み込めない可能性もあり、健康状態を損ねて最悪の場合命に関わる仕事で、管理栄養士・栄養士と協働しながら専門職として働いています。
介護老人保健施設で働くために必要な資格
介護老人保険施設で働くのは、無資格でも可能です。
ただ、役職を目指す場合は資格が必要となります。
あると良い資格としては、以下のようなものになります。
介護職の初歩資格。この資格を持ってスタートラインと言われている。持っていると身体介助ができるようになる。
医療的ケアも学べるようになる介護職の資格です。介護福祉士の資格を取るのに必須の資格となります。
現場の介護職のなかでも最上位の資格です。介護職員の中心的存在で、サービス提供責任者や生活相談員にもなることができます。
利用者に介護サービスを計画します。(ケアプランの提供)家族の相談に乗り、介護度の調査や福祉用具の貸し出し斡旋なども行います。
関係者との連絡や調整などの業務を行います。
介護保険給付金の請求業務を主に行います。介護保険の基礎~請求業務まで学ぶことができます。
上記の資格を持っていれば、老健で働くことができます。
老健の募集状況によって職種は変わってくるので、自分が持っている資格があり、老健が気になる場合は、確認してみることをおすすめします。
介護老人保健施設の収入はどれくらい?
老健の介護職の収入は、通常以下のようになっています。
※公益財団法人介護安定労働センター 平成27年度介護労働実態調査結果から抜粋
- 平均税込み月収 22万7千円
ユニット型でなく従来型の場合、賞与が手厚いなど、福利厚生が充実している事業所が多いです。また、全体的に給与面、福利厚生が充実しています。特に特養と比較して夜勤手当が高いところが多くなります。
制服があるところが多く、基本的には服を汚すような心配はありません。
各職種の年収は?
各職種の年収は以下のようになっています。
- 医師:1200万~1400万円程度
- 薬剤師:350万~450万円程度
- 看護師:400万~500万円程度
- 准看護師:320万~420万円程度
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:350万~400万円程度
- 介護福祉士:340万~380万円程度
- 介護福祉士以外の介護職員:300万~380万円程度
- 管理栄養士:380万~420万円程度
- 栄養士:330万~380万円程度
- 調理員:280万~330万円程度
- 事務員:280万~330万円
介護老人保健施設での経験は大きい
介護施設は日々増え続けています。少子高齢化のこのご時世で、どうしても数が増えていくのは当然でしょう。介護職としては働く場所が増えて嬉しい一方、人手不足に悩まされることも多いです。
そんな数ある介護施設の中でも、介護老人保健施設は特殊な施設と言えるでしょう。
医療と介護がタッグを組んで、利用者をサポートしている施設です。介護老人保健施設では、病院から退院した利用者が自宅に返っても安心して過ごせるようにしていく施設です。
医療・介護・リハビリ・その他のスタッフがサポートしあっています。専門性が高いサービスを提供できることが、仕事へのモチベーションになっていきます。
介護の仕事をしてみたい、介護の転職を検討している、という方は、保有資格を有効活用したり、介護老人保健施設で働いてみることも検討してみましょう。