介護における医療行為ってなに?良し悪しのボーダーは 作成日:2017.07.13
最終更新日:2019.11.12
かつては、ヘルパーなどの介護従事者には、介護保険制度によって医療行為とみなされる介助についてはできないとされていた時期がありました。
耳かきや爪切りなどの日常的な行為であっても、医療行為とみなされていたのです。
ほかにも、体温測定や血圧測定などの道具を使う医療に準じた行為、ひげそりや散髪など刃物を使う行為、床ずれしてしまった患部のガーゼの取替や座薬の挿入、目薬の点眼などの薬品を使用する行為などが禁止されていました。
医療職の専門性を保護するために、医療職もしくは患者の家族以外は体温測定などすらも許されていなかったのです。
しかし、平成17年にこの規制が緩和され、介助の範囲でできる仕事が増えました。
今回は、介護職に従事する方たちがどのような医療行為をすることができるのかご紹介していきます。
介護でできる仕事の範囲とは
少子高齢化の現代では、家族による高齢者の介護が困難であるケースが増え、問題となっています。
ニーズの増加に伴い、介護従事者によるサービスも充実してきていますが、介護従事者による介助にはできることとできないことがあります。
特に、医療行為とみなされる行為は禁止されているものが多いです。
医療行為とは、医師の医学的判断および技術をもっていなければ、人体に危害を与えるおそれのある行為のことです。
中には、あまり専門的知識がなくてもできること、あるいは日常生活において健康な場合は自分でできるような行為も含まれています。
したがって、介護の範囲でも行えるのではないかと誤解してしまうものもあります。
そのため、何ができて何ができないのかを認識しておくことが重要なのです。
それでは、介護従事者ができる行為について見てみましょう。
介護における医療行為でない行為
まずは、医療行為とみなされなくなったため、介護の範囲でできるようになった介助についてまとめておきます。
- 水銀体温計や電子体温計による腋下の体温測定、耳式電子体温計による外耳道での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
また、ほかにももっと治療らしいものもできるようになりました。
- 軽微な切り傷、擦り傷、やけどなどについて、専門的な判断や技術が不要な処置
- 軟膏の塗布
- 湿布の貼付
- 点眼薬の点眼
- 内服薬の内服
- 座薬の挿入
これらについても、本人や家族からの依頼があれば介助することができます。
介護における医療行為
次に、法律上は医療行為とみなされていますが、規制の緩和により介護従事者が介助できるようになったケアを紹介します。
- 爪切り、爪やすりによるやすりがけ(ただし、爪とその周囲に異常がなく、糖尿病などの疾患に伴う専門的管理が不要な場合)
- 歯ブラシや綿棒等による歯、口腔粘膜、舌に付着した汚れの除去
- 耳垢の除去(ただし、耳垢塞栓を除く)
- ストーマ装置のパウチに溜まった排泄物の廃棄
- 自己導尿の補助としてのカテーテルの準備および体位の保持
- 市販のイチヂク浣腸を用いた浣腸
これら6つです。
上に記したものは、家族は日常的に行っている行為でありますが、「衛生面・整容面で必要」とケアプランに位置づけられている場合、介護従事者でも行うことができるようになりました。
しかし、市町村や事業所によっては上記に含まれる行為を認めていないところもあります。
何かしらの理由があって介護従事者にやってもらわなければならない場合は、ケアマネージャーに相談して、担当者会議で話し合ってもらいましょう。
広がる介護の医療行為
更に、平成24年からは、指定研修および実地研修を修了した介護従事者限定で、たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)の介助もできるようになりました。
たんの吸引あるいは経管栄養は、長期の在宅生活を可能にするために不可欠な医療的行為です。
しかし、現在はニーズがそれほどないので、訪問看護で十分という声もあります。
需要の少なさから、全ての介護従事者が上記の行為を行うための研修を修了しているわけではないようです。
しかし、いずれこれらの需要は増え、訪問看護だけでは対応できなくなる時代が訪れると思われます。
高齢化社会の到来により、医療従事者のみによる医療行為には限界があります。
この先、介護の医療行為がますます広がっていくでしょう。
最後に
いかがでしたか。
介護サービスの需要は非常に増えており、規制緩和により従事者ができる仕事も増加しましたが、依然できないとされていることもあります。
本人あるいは家族ではできることも、他人には行うことを許されていない行為もあるので、注意が必要です。
しかし、家族の世話が受けられない高齢者のかたにとっては、規制緩和は非常に助かるものなのではないでしょうか。
介護職のかたは、規制緩和によりできるようになった行為を見直してみる価値があるでしょう。
よりよいサービスを提供して、利用者に喜んでもらいましょうね。