介護職員の腰痛は労災の対象?受けられる条件など 作成日:2017.07.14
最終更新日:2019.11.12
仕事をしていると、どうしても避けられないけがというものがあります。
介護職員の場合、それは腰痛です。
腰の痛みに悩まされていない介護職員の方ももちろんいます。
しかし、厚生労働省が以前に発表したデータによると、社会福祉施設で発生する労災の7割は「動作の反動、無理な動作」や「転倒」によるものと報告されています。
その中でも腰の痛みによる申請は増加の傾向にあるようです。
介護職員の方は、腰を痛めないための知識を持っていることが多いです。そんな中でも、予防や実際の腰の痛み緩和のためにコルセットを着用している方もいるようです。
そこで今回は、労災として認定されるための条件についてまとめました。
多くの介護職員を悩ます腰痛は労災の対象に入るのかについて考えてみましょう。
介護職の腰痛は職業病
介護職は、中腰での作業や利用者を抱きかかえた作業など、身体への負担が多い仕事です。
特に、腰への負担が大きく、痛みは介護職の方にとっては、いわゆる職業病とも言い表せるでしょう。
入浴や食事の補助、おむつの交換など、長時間腰を曲げた状態での作業。
慢性的な腰の痛みや、無理な体勢で重いものを持ち上げたことでぎっくり腰になってしまったという方も多いでしょう。
腰への負担が少ない介護方法が紹介されたり、十分な休養が推奨されたりしていますが、ハードな環境の中で常に注意を払うということは難しいと思います。
実際に、腰の痛みに悩まされて退職してしまった介護職員の方も少なくないようです。
仕事を辞めることはしなくても、マッサージや整骨院、ジムなどに通って少しでも緩和させようとしている方は多いようです。
これほど介護職の方を悩ませている腰痛は、労災の対象に入るのでしょうか。
そもそも労災ってなに?
そもそも労災とはというところから軽く説明していきましょう。
仕事が原因でケガを負ったり病気になったりした時に国から保険金が貰える制度を労働災害といいます。
具体的には、「業務上災害」または「通勤災害」によって労働者がケガ、病気、死亡をした場合に適用される保険です。
労働者本人や遺族に対して一定の保険給付がなされますよ。
会社が保険料を払ってくれています。
従業員が一人でもいる会社の場合は労働保険への加入が義務付けられるので、なにもせずとも受けることができます。
正規雇用非正規雇用関係なく、だれでも受けられますよ。
介護職の腰痛は労働災害の対象になるのか?
まず、労働災害として認定されるために必要な観点について見てみましょう。
「業務起因性」と「業務遂行性」という観点で条件を満たしているかが測られます。
「業務起因性」とは、その負傷や病気の発生と業務に因果関係があるかどうかということです。
業務内容と因果関係があれば、労災保険対象となります。
しかし、関係がない場合は私傷病とみなされ、社会保険の対応となるのです。
社会保険とは、いつも通り保険証を見せて受診することですよ。
「業務遂行性」とは労働契約に基づいて使用者の支配下に置かれ、業務を行っていた際に発生したかどうかということです。
腰痛は労災対象なのか
では、介護職員の腰痛は労働災害保険の対象に入るのでしょうか。
「業務によるものなのか」、「プライベートによるものなのか」、「加齢によるものなのか」という3つの項目から対象かどうかが考えられます。
この3つを区別することが難しいため、厚生労働省では「業務上の腰痛の認定基準等について」という通達で考えを示しています。
この通達によると、腰の痛みを「災害性の原因」と「災害性の原因ではない」ものの2つに区分して説明されています。
災害制の原因とはどういう場合に適用されるか
「災害性の原因」とは、例えば、介護中に高齢者を抱きかかえようとしたところ、その衝撃でぎっくり腰になってしまったという場合です。
これは業務遂行中であるため、業務との因果関係をはっきりと認識できます。
よって労働災害として認定されます。
一方、「災害性の原因ではない」とは、日々の介護業務による腰への負担が積み重なって腰痛を発症するというような場合です。前に述べたような明確な理由があるわけではないので、判断が難しいのです。
災害性の原因ではない時に労災を受けるには
このような「災害性の原因ではない」場合に認定が得られるためには、更に2つの条件が必要となります。
- 「腰に過度の負担がかかる業務に比較的短期間(約3ヶ月から数年以内)従事した労働者に発症した腰痛であること」
- 「重量物を取り扱う業務または腰に過度の負担がかかる作業態様の業務に長期間(約10年以上)にわたって継続し従事した労働者に発症した慢性的な腰痛であること」
これらの条件を満たせば、補償を受けることができますよ。
労災を受ける手続きは面倒がらずに
「災害性の原因」、「災害性の原因ではない」のいずれの場合も、自分がどのような業務をどのくらいの期間行っていたのかを労働基準監督に証明しなくてはいけません。
そのためには、会社の協力が必要となってきます。
また、医学的にも発症を証明しなくてはいけないので、医師の診断も必要です。
労災の申請、認定の手続きはこのように面倒な点も多くあります。しかし、認定を受ければ種々の補償を受けることができるので、快適に業務を続けることができます。
労働災害に関する専門知識がなく、煩雑な手続きに取り組む自信がない方は、専門のコンサルタントに相談することも手でしょう。
もし派遣社員として働いていたら、登録先の担当者に相談してみてもいいかもしれませんね。
最後に
いかがでしたか。
介護職は、無理な姿勢での業務が多いため、腰への負担は避けられません。
腰痛でお悩みの介護職員の方は多いですが、労災の申請は既にお済みでしょうか。
認定を貰い治療を受けることができれば、腰の痛みを理由に介護職を退職する必要性も少なくなります。
申請の手間はかかりますが、もう一度条件と自分の業務状況を確認してみましょう。
本記事が皆様の一助となれば幸いです。
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